藤井昭子地歌ライブ(6月15日)
10年間続けて開催されているライブで、44回目になるそうです。前回聴きに行ったのは、何年前だったか、会場は新宿のレストランで、その日はご母堂の人間国宝 故藤井久仁江先生が会場にいらっしゃいました。今年から会場が東京都文京区にある求道会館に代わりました。今回は、今年4回行われるシリーズの2回目で、テーマは端唄、曲目は「ひなぶり(胡弓:高橋翠秋師)」「小簾の戸」「菊の露(尺八;善養寺恵介師)」「濡れ扇」の4曲でした。
いつもながらの張りのある声で、小細工をしない真っ直ぐな、それでいて単調に陥らない歌に魅了されました。途中、屋根を叩きつける激しい雨音が会場内にも響きましたが、それが気にならない見事な歌いぶりだったと思います。特に最後の「濡れ扇」、繁太夫ものと言うジャンルに属すると言うことですが、初めて聴く曲で、最後まで引き込まれてしまいました。
端唄・地歌に限らず、箏曲などでも、初めて聴いて、「何を歌っているのか、よく聴き取れない」と言う人が多いようです。歌詞のほとんどが文語であることもその一因かと思いますが、やたらに歌詞をこねくり回して、わざと聴きづらくしているのでは、と思える演奏もあります(その方が有り難みがあるとでも思っているのでしょうか)。邦楽特有の、拍子をずらした歌い方でも、歌詞を聴き取りやすく歌うことができる、と言うことを、この日の演奏ははっきりと示していたように思います。
高橋師の胡弓は、川瀬白秋先生譲りの艶のある音色で、歌をよく引き立てていたと思います。
善養寺師の尺八も、伸びやかな、それでいて、歌の流れに寄り添う如く、抑制のきいた、すばらしい演奏でした。技術の巧拙にかかわらず、やたらに自己主張をしたがる尺八吹きが多いのですが、控え目に吹いても、充分に個性を表現できると言う見本のような演奏でした。
お二人とも、それぞれの持ち味を充分に生かした助演だったと思います。
ところで、会場の「求道会館」、東京都の有形文化財に指定されています。この建物、実は私が以前勤めていた古建築の設計事務所で、修理工事の監理をしていました。私は直接担当ではありませんでしたが、時折手伝いなどで応援に行ったこともあり、それなりに思い出のある建物です。そのような建物の中で聴く演奏は、また格別でした。
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